天保の創業より七代、酒粕や日本酒を加えたりしない古法の自家仕込み酒種を使った酒まんじゅうの製法を大切に守り、敦賀の伝統銘菓“天清(てんせ)の酒万寿”と今日に至るまでお引き立て賜っております。当店は古くより気比神宮前を住まいとし貸本業を営んでおりましたが、天保初年に当主が酒まんじゅうの製法を伝授され、貸本業のかたわら開業に至ったと伝え聞いております。年月を経た今では敦賀で酒まんじゅうを作り続けているのは当店だけになりました。ぜひ伝統の味をご賞味ください。
天清の酒万寿(製法)
1日目
ー酒まんじゅうの元たねの仕込みー
炊いた餅米に麹(福井県産米100%)、生地の仕込みの時にできる粕、創業当時から使ってる井戸水を混ぜておきます。
ー元たねを発酵させるー
元たねを適温に保ち優しくかき混ぜゆっくりと発酵をうながします。
ー元たねを使った生地の仕込みー
発酵してもろみのようになった元たねを漉しますが、濾し切れない分は両手を使って搾ります。元たねからは、甘酒のような白い濁った搾り汁と丹念に搾っても搾り切れなかった粕が残ります。この粕を大事に保管して次の仕込みの時に使うことによって、始まりの発酵から途切れることなく代々引き継がれてきた酵母を現在の酒まんじゅうに生かしているのです。生地は搾り汁の中に小麦粉と水飴を混ぜてしっかりこねて作ります。
ー生地を発酵させるー
ボウルに入った生地を発酵に最適な温度に保って一晩ねかせます。
2日目
ー発酵した生地で皮を作り、餡を包むー
まとまっていた生地は一晩かかって発酵すると、朝にはふわっと空気を含んでいて、酒まんじゅう独特の香りが仕事場に漂います。前の晩に仕込んだ時の大きさから4、5倍にふくらんだ、そのふくらみに最初のヘラを入れると、その瞬間、あっという間に生地は縮こまり液状に変わってしまいます。 その日の気温によって生地の様子は違います。小麦粉と砂糖を生地に入れてヘラで混ぜてみると、その感触でその日のホイロのとり具合(必要な発酵時間)がわかります。生地を板の上におろして小麦粉をもみ込みます。これは酒まんじゅう作りで一番骨の折れる作業です。その皮で餡玉を包み酒まんじゅうの形を作ります。
ーホイロ(焙炉)に並べて最終発酵(3回目)ー
焙炉とは食材などを緩やかに熱して加工するための複数の棚のある木箱で、大人の背丈ほどの高さがあります。ふっくらしてくるまで30分、長いと1時間近くホイロでねかせます。寒い時期ほどホイロをとる時間が長くなります。
ー角セイロ(蒸籠)に並べて蒸すー
柔らかくなった酒まんじゅうをホイロからそっとセイロに移し替えます。酒まんじゅうの大きさによりますが、約12~20分で蒸しあがります。蒸しあがった酒まんじゅうには、発酵を繰り返した柔らかい皮が醸す香りとその風味が餡に滲み込んでいます。